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お気に入りの器とともに 家呑みで楽しむ天理の食と美酒 - 大和酒蔵風物誌・第3回「稲乃花 瑠璃」(稲田酒造)by侘助(その4)

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奈良のうま酒を楽しむ(読者プレゼントあり)

奈良県天理に絶品「大和ハム」を求めて

 今回の取材先が天理と決まったときから、アテはハムにしようと初めから決めていた。永久寺跡から国道25号に出て天理ダムのほうに上っていくと、布留川沿いにゴールド・シー食品というハム工房がある。帯広畜産大学でハムづくりを学んだ金田吉海代表が手づくりハムにこだわって営む本格ハム工房だ。「大和ハム」というブランドで販売している。以前会社の同僚からその存在を教えてもらって、筆者の双子の娘のひとりが生ハムが好物なので、家族で出かけたことがあった。そのときには残念ながら生ハムはなかったが、ロースハムや焼豚、パンチェッタ、鹿肉のソーセージなどたくさん他の商品を分けて頂いて、家族で堪能した。「うちのハムを食べたら他は食べられへん」と金田代表がおっしゃるとおり、その異次元の美味しさに皆で舌を巻いた。

 

金田吉海代表


 それからしばらくして、金田さんが娘の好みを覚えていてくださって、「生ハムつくったからおいで」と声をかけてくださった。再びお邪魔して、またまたたくさんのハム類を持ち帰ったが、そのときには改めて生ハムの本当の味を実感した。高一の娘はけっこう味に敏感で、美味しいものを食べると目を見開いて驚いたような表情をする。金田さんの生ハムを食べて、彼女がその美味しい顔をしたのはいうまでもない。ここのハムは一般に販売されているそれとは別の食べ物だと認識したほうがいい。そうでないと、本当にここのハムしか食べられなくなってしまう。

 

野菜ハムとロースハム


 金田さんは大学を出てすぐに、実家の肉屋を手伝う傍らでハムづくりに取り組みはじめた。「実家は天理市内で主に米沢牛を扱う肉屋をやっていましたが、牧場で豚を千頭程飼っていた事情から、ハムをやりはじめました。大学で学んだ技術を基に、製品化できるまで2年程かかりました。それからずっと、無添加、無着色の手づくりハムにこだわってもう50年以上になります」。

 

 スーパーなどの販路にのせていないので、いつでもどこでも手に入るわけではないが、直接工房に連絡すれば通販で対応してくれる。ただ、生ハムの例でもわかるように、いつでも商品が揃っているわけではない。今回もたくさん分けて頂こうと意気込んで伺ったのに、10月11日から橿原の近鉄百貨店で特別セールをやるので、その仕込みに忙しくて、商品が品薄なのだという。それでも、仕込んである数少ない商品のなかから、金田さんは、今回の取材用に、人気の高い野菜ハムのかたまりをおろしてきて、目の前で切り分けて下さった。まさにおろしたて。にんじんとピーマンが混ざっているという。これはいかにも美味そうだ。もちろん「瑠璃」にも合うはずだ。

 

野菜ハムを専用機で切る金田代表


 工房から再び国道25号を市街のほうへ向かうと、その道沿いに「なら歴史芸術文化村」があって、そこに具合よく道の駅がある。ハムに添える野菜を求めて、その野菜コーナーを巡っていたら珍しいオクラがあった。ふつうおくらといえば緑と決まっているが、そこには赤紫のオクラが混じっていた。今がちょうど旬だし、盛りつける際の彩りという点でもイケるなと思って、ハート型のプチトマトと一緒に2品を調達した。これで前回同様アテは地元産で賄える。

 

道の駅正面入り口

 

 

道の駅で仕入れた赤いオクラとハートのトマト。上は稲田酒造で頂いた酒粕飴

 

 

ぬくもり感じる酒器で「瑠璃」を呑む

 稲田さんから「瑠璃」が届くのを待っていよいよ家呑みに。今回の酒器は、淡路島で工房を営んでいる陶芸家の大前悟さんのぐい呑みと片口を選んだ。季節が少しだけ秋めいてきたので、陶の温かみを感じられる2点。ぐい呑みは、茶道の世界で珍重される柿の蔕(へた)茶碗をモデルにした作品。土をそのまま形にしたような野性味が特徴で、大前さんはそのエッセンスを淡路の土を使いながら現代に蘇らせている。

 

 片口は所謂粉引のバリエーションともいえる無地刷毛目。粉引は白泥を器全体に施すが、無地刷毛目は高台まわりを土みせにするのが特徴。塩笥(しおげ)を原型にしているが、そのユニークな形と注ぎ口のキレのよさで我が家の晩酌にはしばしば登場する。秋になると、茶陶の世界で高麗物といわれる器が、なぜか恋しくなる。その素朴なつくりと土の質感が季節にマッチするからか。作者の大前さんはこの手のやきものがとてもうまい。もちろん「瑠璃」のまろやかさもうまく受けとめてくれるはずである。

 

柿の蔕ぐい呑み(大前悟)

 

無地刷毛目片口(大前悟)


 アテを盛るお皿は、これも土の温かみの感じられる備前を選んだ。筆者の下手な写真ではわかりにくいが、このお皿の火色の赤い部分がとても鮮やかで、派手でありながら反対側が備前の土そのままの表情なので、そのコントラストがバランスよく、どんな料理にも合う。使い勝手がいいことから、このお皿もよく使う。作者は備前の陶芸家の近藤正彦さん。備前の作家ばかりを集めたグループ展でとりわけ目を引いたので分けて頂いた。料理を食べ終わって、この赤が再びみえてくると、やっぱりこの皿はいいなと改めて満足する。手前部分の石ハゼも景色をつくっている。良い器で食を楽しむとはまさにそういうことなのだろう。

 

備前四方皿(近藤正彦)


 金田さんの野菜ハムはシンプルに焼いて食べるのがいちばんと思い、強火で熱したフライパンでサッと表面を炒めるだけにした。にんにくの香りがいかにも食欲をそそる。プチトマトはそのままではわかりにくいので、半分に切ってハート型がしっかりみえるように盛りつけた。

 

 ところが、事件はもうひとつの楽しみだったオクラに起こった。何と、あれだけ鮮やかだった赤紫が茹でているあいだにどこかに行ってしまった。あれれ?だんだん緑になっていくぞ。鍋のなかでみるみる色を失っていくオクラたちを眺めながら、やっぱりオクラは緑なのだなと納得するしかなすすべがなかった。調べてみたら、赤いオクラは品種としては確かにあるそうだ。アントシアニンという栄養素のせいで赤紫になるそうだが、これが茹でると抜けてしまうらしい。だから、赤いままに楽しもうと思ったら、生で食べるのがおすすめだという。知っていれば赤いのだけ除けてそのまま食べたのになあ。茹でる前に、盛りつけるならこんな感じと、生のままのオクラをお皿に並べていたからなおさら惜しい。

 

三本のオクラのうち上のオクラは元々赤紫だった。


 さて、気を取り直して、三品を備前皿に盛りつけて、最後にこのメニューには欠かせないマヨネーズを添える。長年マヨラーを自認する筆者にとって、ハムとか、オクラとか、トマトは、マヨネーズパートナーの代表選手のようなもの。今回の食材はどれも特別なので、もちろん何もつけずに頂くのが王道だが、マヨをつけるとまた別の美味しさを体験できるはず。初めはそのままに、次にマヨと一緒に二段階の美味しさをそれぞれ楽しむことに。きっとどちらも「瑠璃」には合うだろう。それでは始めよう。今宵はドビュッシーでも聴きながら「瑠璃」の酔いに身を任せるとしようか。(第3回了)

 

 

 

 

 

読者プレゼント「稲乃花 瑠璃」を抽選で3名様に

 

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