金曜時評

銃撃現場整備 極めて妥当な判断 - 論説委員 増山 和樹

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 近鉄大和西大寺駅前で演説中だった安倍晋三元首相が凶弾に倒れてあす8日で3カ月になる。銃撃現場はガードレールに囲まれた一角で、市が道路などを整備中だった。事件後に多くの人が手を合わせたこの場所をどのように扱うのか、市にとって悩ましい課題となったが、仲川元庸市長は4日、予定通り車道として整備することを明らかにした。

 

 歩道は最大幅16メートルと広くし、現場に面した一角に花壇を設けることで「事件を乗り越え、安全や平和を希求する市民の願い」を象徴する。慰霊碑などの設置案も検討されたが、従来通りの整備を決めた市の判断は、極めて妥当と言えるだろう。

 

 安倍氏は憲政史上最も長く首相の任にあった政治家だが、整備計画の変更や慰霊碑設置となれば、市の予算を割くことの是非が問われる。多額の国費をかけた安倍氏の国葬と同じく、世論を二分することになりかねない。

 

 銃撃現場の扱いについて、市の対応方針は慰霊碑の設置を含めて3案あり、地元住民や有識者の意見も聞いて従来通りを選択した。「事件を思い出すと怖くて歩けない」との声もあり、計画変更への反対は賛成を大きく上回った。仲川市長は構造物の設置が脇見運転など事故誘発につながることも理由に挙げた。

 

 銃撃の映像が繰り返し流れたあの日、暗殺の恐怖は銃声とともに人々の脳裏に刻まれた。県内を代表する商業地の一つで多くの人が行き交う駅前に、その衝撃を呼び起こす構造物を設けることは、亡くなった安倍氏も喜ぶまい。

 

 忘れてならないのは、1丁の銃が理不尽に人の命を奪い、人生を断ち切ったことだ。引き金を引くという小さな動作ともたらされた結果の隔たりに改めて戦慄(せんりつ)を覚える。どのような理由があろうと決して許されることではなく、同じような悲劇が二度と起きてはならない。

 

 手製銃とはいえ、凶行は日本で、白昼、公衆の面前で起きた。にわかには信じ難いこの事実を受け止め、暴力を許さない決意を新たにしたい。

 

 銃撃現場を含む一帯の整備は来年3月に終わる予定だ。歩道に設けられる花壇前では、これからも安倍氏の命日などに手を合わせる人がいるだろう。国葬は反対の声が渦巻く中で行われたが、安倍氏の政治的評価に関係なく、四季に美しく咲く花が訪れる人の気持ちを包んでくれる、そんな場所になればいい。

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