金曜時評

反田恭平さんの夢 奈良を音楽の都に - 編集委員 高瀬 法義

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 先日、ある人気歌手のコンサートが奈良市内であった。50年近いキャリアを持つベテランだが、県内では初めてで、47都道府県で唯一の「未踏の地」だったという。この人に限らず、県内で人気のコンサートを聴ける機会は少ない。一般社団法人「コンサートプロモーターズ協会」の2021年基礎調査報告書によると、県内における全ジャンルの音楽の年間公演回数は62本で、全国34位に低迷する。

 

 ただ、県民が音楽に興味がないわけではない。総務省の16年度社会生活基本調査では、都道府県別「趣味・娯楽」の種類別行動者率で「音楽会などによるクラシック音楽鑑賞」が10・4%(全国8位)、「音楽会などによるポピュラー音楽・歌謡曲鑑賞」が14・4%(同6位)と全国上位だ。県内での音楽公演は需要はあるが、会場や収容人数の少なさなどの理由で興行的に難しいと思われる。

 

 そんな本県を、21年度「ショパン国際ピアノコンクール」で2位に輝いたピアニストの反田恭平さんの「ジャパン・ナショナル・オーケストラ(JNO)」が本拠地とした。オーケストラでは珍しい「株式会社」で、反田さんが代表取締役を務め、約20人の演奏家が社員として活動する。

 

 反田さんは県内を拠点とした理由について、出資を受ける工作機械会社「DMG森精機」の創業地であることなどのほか、1300年の歴史を持つ奈良と音楽の都・ワルシャワ(ポーランド)との共通性を挙げる。著書「終止符のない人生」(幻冬舎)の中で、「ポーランド人は国家に対する思い、祖国に抱く愛情が強烈であり、どこまでも深い。これは奈良の人々にも共通する。奈良で暮らしていると、ワルシャワに共通するものをいつも感じるのだ」と記す。

 

 反田さんは音楽学校の設立も計画する。これまで培ってきたコネクションも生かして一流音楽家を講師に招き、国内だけなく世界から留学生が集まるような学校を目指す。さらに子どもから高齢者まで誰もが音楽を楽しめるフェスティバルや一流の音楽家たちが競い合う国際音楽コンクールの開催と、反田さんの夢は広がる。実現すれば、奈良はワルシャワにも負けない「音楽の都」となり、大阪などに行かなくてもあらゆるジャンルのコンサートを楽しめるはず。

 

 そのためには、近隣府県と比べると、質量ともに見劣りするハード面での整備も必要だ。まずは老朽化が著しい、県の文化発信の中心となるべき県文化会館の整備が急がれる。

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