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逢香の華やぐ大和 聖林寺(奈良県桜井市)

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「永遠」を感じる空間

穏やかな光、観音様と再会

 書家の逢香さんが県内の社寺や名所を訪ね、地域の魅力を発見する「逢香の華やぐ大和」。今回は奈良時代の仏像彫刻の傑作、国宝十一面観音菩薩立像を祭る観音堂が改修された桜井市下の聖林寺へ。たたずむ美に対面し、無限の世界を感じました。(木之下伸子)

 

いざ、聖林寺へ=写真はいずれも桜井市下

 

 

華やぐ境内で住職に再会

 傾斜のある参道を軽やかに進んだ逢香さん。大和盆地を一望する門前で立ち止まり、前方後円墳の箸墓古墳やメスリ山古墳、三輪山を確かめながら歴史をたどって心が弾む。

 

 「お久しぶりです」。赤や黄色の小さな実に彩られた境内で、倉本明佳住職に迎えられた。ナンテンやセンリョウ、マンリョウの赤い実に交じって、キミノセンリョウと呼ばれる黄色の実も。「かわいい」と駆け寄る逢香さん。安産・子授けの霊験で知られるお寺で、倉本住職の父親が約30年前、実がなる庭木を好んで増やしたという。

 

赤や黄色の実をめでる逢香さん(右)と倉本住職

 

 

安産・子授けの仏さまに祈り

 ご本尊の子安延命地蔵菩薩(江戸時代)は人々の不安を包み込むような大きなお地蔵さま。台座の蓮台も含め一枚の花崗岩から堀り出されていてどっしりと安定感がある。

 

 まだ医学が整わずお産で苦しむ女性が多かった時代、同寺の僧、文春が諸国行脚で浄財を集めて造像、開眼したと伝わる。親に先立って亡くなった子が送られる賽(さい)の河原で、子は父母を思って石を積むが絶えず鬼が邪魔をする。そこへ現れて子を救うのが地蔵菩薩だという。「地蔵菩薩は手にした錫杖(しゃくじょう)の音で、まだ目が見えない赤子たちを導いてくださるのです」と語る倉本住職と並んで逢香さんは静かに手を合わせた。

 

本堂でご本尊に手を合わせる

 

 

改修された観音堂と完成形の美の観音像

 師走の空気が冷たい。観音堂へは本堂を出て階段を登った。昨年5月に改修された鉄筋コンクリート造りのお堂は完璧な収蔵庫だが、重たい扉の向こうには現代人のための祈りの空間があった。まず、吉野スギの腰掛けが配された前室で、国宝十一面観音菩薩立像を正面から仰ぐ。参拝者はさらに足元へ近づき、収蔵庫となっている内陣をぐるりと一周できるつくりだ。

 

 明治時代に来日した米国人哲学者アーネスト・フェロノサや岡倉天心らが絶賛したその十一面観音は、半球型の天井を「天蓋(てんがい)」のように頭上にかざし、計算し尽くされた穏やかな照明光の中にたたずんでいる。

 

 「指先までしなやかで、美の完成形なんでしょうね」と吸い込まれるように眺め入る逢香さん。「たゆんだ衣に風を感じる」とつぶやくと、倉本住職はうなづいて「水上に咲くハスの花に観音様がふっと降り立った瞬間なのでしょう。水面に映る返り花や水の輪も表現されています」と語った。

 

 

正月三が日に公開される女神たち

 正月三が日限定で公開するという小さな仏像2体も特別に見せてもらった。秘仏の弁財天と宝蔵天で、小さいがとても美しい。

 

 休憩は、境内の建物を改修して昨年オープンした春秋限定のカフェ「聖林茶館」へ。ぷるんぷるんの大和抹茶ムースと和紅茶でくつろぎ、「ふわあ、おなかいっぱいになっちゃった」ととろける逢香さん。

 

聖林茶館は春秋以外は要予約

 

聖林茶館の大和抹茶ムース

 

 最後は境内の鐘を打ってこの一年を振り返り、「(NHK奈良放送局で開かれた)先日の展示イベントはめちゃくちゃいろんな人に見てもらえていると実感できて、自分をぎゅうって抱きしめたくなりました。ありがとうございました」と感謝を込めて締めくくった。

 

1年の感謝を込め、境内の鐘をつく逢香さん

 

 

 

どっしり大きなお地蔵さま

本尊・子安延命地蔵菩薩

 

 

たゆんだ衣 風ふわり

参拝者が絶えない観音堂

 

正月三が日限定で公開される2体の秘仏

 

 

逢香の目

「無限大の記号を書いたのは初めて」と作品を手にする逢香さん

 

 キミノセンリョウをイメージし、用意した黄色の和紙にさらさらと「十一面観音 百聞は一見にしかず 千両万両∞(インフィニティー)」としたためた。数字に遊び心を込め、2本の筆を使い分けた。

 

 クラウドファンディングで資金を集めて改修された観音堂で「観音さんを守りたいという皆の気持ちや永遠を感じた」といい、モダンな空間を演出する照明や吉野スギにも感動。「観音さんの美しさは写真では全然分からない。ぜひ実際にお参りしてほしい」と話した。

 

メモ

◆聖林寺
 桜井市下。近鉄・JR桜井駅から奈良交通「談山神社」行きバス「聖林寺」下車すぐ。車は西名阪・天理インターから国道169号経由約13キロ。専用駐車場(有料)あり。

 

◆書家/逢香(おうか)

 奈良市在住。奈良教育大学伝統文化教育専攻書道教育専修卒業。6歳から書道を学ぶ。2020年、橿原神宮御鎮座130年記念大祭の題字を揮毫(きごう)。同年、元興寺(奈良市、世界遺産)の絵馬の書・画・印デザインを手掛ける。大学時代に個性豊かな妖怪に興味を持ち、「妖怪書家」としても活動。奈良市観光大使。

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