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逢香の華やぐ大和 王隠堂農園(奈良県五條市)

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王隠堂農園(奈良県五條市)を訪ねて

実りの秋、柿たわわ オレンジに染まる畑

 書家の逢香さんが県内の土地土地を巡り、季節の魅力を発見する「逢香の華やぐ大和」。今回は五條市の柿畑と玉泉院です。(高橋智子)

 

 

斜面を埋め尽くす柿畑

 日本有数の柿産地、五條市西吉野町。車が1台通るのもやっとの細い山道を移動し、逢香さんは柿畑に到着した。

 

 「柿であふれてますね!」。山の斜面一帯を埋め尽くす柿の木には富有柿がたわわに実り、オレンジに色づいて収穫の時期を待っていた。

 

たわわに実る富有柿の畑

 

 今回は、この地域で柿の農産事業を営む農悠舎(王隠堂正悟哉代表)の油田珠子さん(25)が案内してくれる。「一つ一つ手もぎで収穫します」。斜面に脚立を立てて収穫するのは大変な作業だが、平面より水はけが良く、糖分が行き渡りやすいのがこの地域ならではという。

 

 種なし柿は渋を抜いており、干し柿など加工品に適している。一方、富有柿はもとからとても甘く、丸く大きいのが特徴。そのまま食べるのに適していると説明してくれた。

 

 

柿畑にカラス襲来?

 急にけたたましいカラスの鳴き声がこだました。「けっこうカラスがいるんですか?」。逢香さんは驚いた表情で空を見上げた。

 

 実はこれは、カラス除けのための偽物の音声。柿畑に設置したスピーカーから、威嚇するようなカラスの声や銃声を数分おきに流しているという。逢香さんは「ディズニーの悪者の城に行く(時の効果音)みたい」。

 

 これらの音声は食害を防ぐ効果があるが、「カラスが音だけと分かり始めている」と油田さん。人間とカラスの知恵比べは、時代とともにアップデートされているようだ。

 

 

柿のもぎ取りに挑戦

 油田さんからやり方を教わり、逢香さんは特別に柿のもぎ取りに挑戦することに。左手に実を持ち、刃が反り曲がった収穫用のはさみを枝と軸の間に差し入れた。

 

柿の収穫に挑戦!

 

反り曲がったはさみを使う

 

 

 パチン! 1度切った後、収穫したかごの中で他の柿を傷付けないよう、軸に2度目のはさみを入れて短く整える。

 

長い軸は切る

 

 「採れました!」。逢香さんは採取した柿を早速むいて頬張った。「シャキシャキ! 1個丸ごと食べられる。程よい甘さですね」。「赤くジュクジュクになった柿を凍らせてスプーンで食べるのもおいしいですよ」と油田さん。

 

 豊かに実る柿の木に囲まれ、「華やぐわ~…」と逢香さん。奥大和の秋の恵みを堪能した。

 

 

熟度は「色」で判断

 富有柿は色で熟度を判断するといい、熟すほど緑から黄色▽オレンジ▽赤っぽいオレンジへと変化する。果肉の食感も固めから柔らかくなっていく。

 

 取材時、農園のスタッフとアルバイト数名が収穫に精を出していた。最盛期にはさらに多くの人が携わる。

 

 複数人で収穫する柿の色味をそろえるため、富有柿用の「果実カラーチャート」や色見本付きの軍手を活用。出荷先の要望を聞いたり、生産者の間で色の認識を統一するのに役立てている。柿に軍手をはめた手を添え、色見本と比較しながら収穫でき便利だという。

 

富有柿のカラーチャート

 

富有柿の色見本付きの軍手

 

 

柿カレーを試食

 農悠舎は来春カフェをオープン予定。現在湯塩地区に建設中だ。油田さんは、カフェで提供しようと開発中の柿入りカレーを逢香さんに用意した。

 

柿が入ったカレー

 

 焼き野菜が彩りよく盛り付けられたカレーを一口食べた逢香さんは、「柿の甘味が感じられ、野菜もたくさん入っていますね。本当においしい!」。

 

 農園の柿▽リンゴ▽ウメなど、10種の果物・野菜▽5種のスパイス▽五條産の鶏肉―を合わせ、ホロホロになるまで煮込んでいる。お米は五條市のブランド「ゆめ野山」を使用。地元素材をふんだんに使った五條づくしのカレーを味わった。

 

 

地域と農業の魅力発信

 同社は若い人に地域と農業の魅力を知ってもらおうと、レストランやカフェ、グランピングなど新しい事業を展開。食事や暮らし体験、就労と合わせて収穫も体験してもらうなど、取り組みを始めている。

 

農悠舎のグランピング施設「天地のテラスゆしお」

 

 おいしいカレーと眼前に広がる絶景に、心もお腹も満たされた逢香さん。「ここならではの味。皆さんにぜひ来ていただきたいです」

 

 ※取材は11月8日。天候、気候などで草木の状態や景観が変化することがある。

 

 

玉泉院でお守りづくり・14体の仏様から選択

 

 油田さんの実家「湯塩山玉泉院」は南北朝時代の後醍醐天皇ゆかりの寺。オリジナルのお守りづくりを体験できる。

 

 まず自分に縁があると思う仏様を選び、その仏が描かれた紙を内符(お守りの中身)の包み紙にする。逢香さんは大日如来など全14体から、世間の苦しみをよく聞き救済するという「聖観世音(しょうかんのん)菩薩」を選んだ。

 

 五宝(金・銀・瑠璃・真珠・水晶)▽五香(沈香・白檀・龍脳・丁子・鬱金)▽五薬(赤箭・人参・伏苓・石菖蒲・天門冬)▽五穀(稲・大麦・小麦・大豆・小豆)▽芥子―の供物を合わせ、油田さんの父正光住職(48)と母研英・副住職(54)が祈祷。それらを包み、内符を作った。

 

 逢香さんは祈とうを受けた特別なお守りを受け取り、「大切に使わせていただきたい」と話した。

 

お守りに入れる21種の供物を逢香さんに説明する油田住職(左から2人目)

 

祈祷を受けたオリジナルのお守りを受け取り、「大切にしたい」と逢香さん

 

 

逢香の目

完成した作品を手にする逢香さん(右)と油田さん

 

 いつもは書画を一人で書いている逢香さんだが、今回は案内役の油田さんと書くことにした。実は、逢香さんが県立高校で教育実習をした時、油田さんが生徒だった縁があるという。

 

 逢香さんは、橙色や緑色の顔彩を使い丸みのある富有柿を水墨画で表現。「柿食うけっこう」と揮毫(きごう)した。一面に広がる柿畑で新鮮な柿や柿カレーを堪能し、「けっこう食べたので」と振り返った。

 

 油田さんは柿の花言葉「恩恵」を篆(てん)書体で揮毫。色紙の下半分には年号、秋を表す言葉、書家名「珠観」、場所を記した。油田さんも大学で書道を専攻し、台湾へ書を学びに留学した腕前。「西吉野の柿を知ってほしい」と思いを込めた。

 

 柿が取り持った再会と共演だった。

 

 

メモ

◆王隠堂農園/旬の野菜レストラン農悠舎王隠堂

 五條市西吉野町154 ※柿の収穫体験は食事つきで提供する。要予約。11月下旬まで。

 問い合わせ、予約は電話:0747(32)0073。

 

◆農悠舎

 五條市野原中4の5の30

 

◆天地のテラスゆしおFARM&EXPERIENCE

 五條市西吉野町湯塩145。問い合わせは電話:0747(26)1831。

 

◆真言宗御室派 湯塩山玉泉院

 五條市西吉野町湯塩517。受け付けは午前9時~午後5時。お守りづくり体験、腕輪念珠手作り体験は高校生以上3000円、中学生以下1500円。所要時間はそれぞれ1時間~1時間半。体験などの予約、問い合わせは電話:0747(32)0006。

 

◆書家/逢香(おうか) 奈良市在住。奈良教育大学伝統文化教育専攻書道教育専修卒業。6歳から書道を学ぶ。2020年、橿原神宮御鎮座130年記念大祭の題字を揮毫(きごう)。同年、元興寺(奈良市、世界遺産)の絵馬の書・画・印デザインを手掛けるなど活躍中。大学入学後、変体仮名の授業をきっかけに個性豊かな妖怪たちに興味を持ち「妖怪書家」としても活動。奈良市観光大使。

 

 

 「逢香の華やぐ大和」は奈良新聞社とNHK奈良放送局のコラボ企画で毎月1回掲載。NHK「ならナビ」(午後6時30分~)内で11月14日に放送。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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